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突然ですが、みなさんは「日報」と聞いて、どんなイメージを持つでしょうか。
私自身、新卒時代に同僚と「日報って本当にやる意味あるのかな?」と話したことがあります。「今日やったこと」「進捗」「明日の予定」「課題」——多くの会社では、日報はこういった業務報告の仕組みとして運用されています。書く側は義務感、読む側は流し読み。気づけば、誰のために書いているのかわからなくなって形骸化していく。日報という仕組みを持つ会社で、似たような悩みを抱えているところは少なくないのではないでしょうか。
キーワードマーケティングにも日報があります。でも、ちょっと普通とは違うんです。業務の進捗を報告する場ではなく、メンバーの気づきや、ハイライト、ちょっとした本音をつぶやく場所。私たちはこれを「ゆる日報」と呼んでいて、昨年7月に運用を始めました。
なぜ「業務報告ではない日報」を作ったのか。どう設計したのか。そして、続けてみて何が起きたのか。今日はその全容をお伝えします。日報を運用している会社、あるいは「うちの会社、なんとなくコミュニケーションが薄くなってきたかも」と感じている経営者の方に、なにかひとつでもヒントになれば嬉しいです。
「あの部署、最近何してるんだろう」「直接話したことないから、声かけづらいな」
会社のメンバーが増えていくと、こんなことが起きがちです。気づけば、同じ会社にいるのに、隣のチームのことをほとんど知らない。これは多くの組織が30名、50名、100名と人数が増えていく過程で、必ずと言っていいほど直面する現象です。
キーワードマーケティングでも、じわじわとその予兆を感じていました。自分のチームとはよくコミュニケーションが取れているのに、他の部署やチームのことはほとんど知らないというメンバーがいる。コミュニケーションのための定例ミーティングを設けている部署もあれば、同じ部署内でも互いの仕事がよく見えていない部署もある。新卒が毎年配属されるチームは限られているので、新卒と関わりのないチームのメンバーからすると、新人がどんなふうに成長しているのかが見えづらい。
「まだ深刻な問題になっているわけではない。でも、このまま人数が増えていったら……?」
そんな危機感が、ゆる日報を作るきっかけになりました。
知らないから、無関心になる。無関心になるから、協力しなくなる。1日のうち家族よりも長い時間を過ごす仲間だから、相手が何に苦戦していて、何に喜んでいるかを知っていたい。直接話したことはなくても、その人の「人となり」をなんとなく知っているからこそ、いざというときに助け合える組織でいたい。そんな想いがありました。
ゆる日報を作るにあたって、私たちは一般的な日報の常識をいったん全部脇に置くことから始めました。
進捗、課題、明日の予定。これらはすべて外しました。代わりに、メンバー同士の相互理解や共感、チームの雰囲気づくりに振り切った項目だけを残しました。
書いてもらう項目は、たった3つです。
そして、口調は「ですます」じゃなくてもOK、というルールにしています。
この設計、シンプルに見えるかもしれませんが、実はいくつかの判断が積み重なっています。順番に紐解いていきます。
日報は毎日書くものです。普段の業務に加えて単純にやることが増えるので、業務時間を圧迫しないことを何よりも意識しました。書くのに5分以上かかるなら、それはもう「ゆる」ではありません。
項目を増やせば、書く側の負担が増えるだけでなく、「今日は埋まらない項目があるな……」という小さなストレスも生まれます。続けてもらえなければ、どんなに立派な仕組みも意味がない。だから、3つに絞りました。
普通の日報には「課題」や「反省」がつきものですが、ゆる日報からは意図的に外しています。
私たちが目指したのは、ポジティブな内容で埋め尽くされる場所でした。仕事でうまくいったこと、間接的な感謝、誰かのおかげで助かったこと、勉強になったこと。それが循環して、また誰かの役に立つ。そんな空気感の場にしたかったのです。キーワードマーケティングのバリューに「HAPPY」があり、そこにもつながるといいなという想いもありました。
たとえば【今日の気づき・学び】は、社内に知見を循環させるための装置です。それと同時に、社会人何年目になっても学び続ける習慣を作る場でもあります。「実はこれ、今日初めて知ったな」という内省を引き出す。そして、この項目には社長や役員も書いています。普段はなかなか聞けない経営層の頭の中が、日報を通じて少しずつ見える。これも狙いのひとつでした。
3つ目の【ひとこと・つぶやき】だけは任意にしました。表向きの理由は「書きたい人だけ書けばいい」という負担軽減です。
でも、もうひとつ大事にしていることがあります。日報には、書かれた文字以上の情報が乗っているということです。
書く分量、選ぶ言葉、ハイライトに何を持ってくるか。そういった部分から、その人の今の状態がなんとなく伝わってきます。元気そうだな、ちょっと疲れているのかな、と。これは上司から部下への一方通行ではなく、同僚同士でも、部下から上司に対しても起こります。互いの状態を、互いになんとなく察知できる。そんな手がかりが、日報には自然と乗っかってくるのです。
ただ、これを「目的」として表に掲げすぎると、書く側は「ちゃんとしたことを書かなきゃ」と身構えてしまいます。だからゆる日報では、それはあくまで自然に生まれる副産物として、強調しすぎないようにしています。「ですます」を不要にしているのも同じ理由です。上司に向けて書く報告書ではなく、自分のために、仲間に向けて気軽に書いていい場所だよ、というメッセージです。
実際にどんなことが書かれているのか、一部抜粋して紹介します。




このくらいゆるくてOKなのです。ゆるいからこそ毎日続けられる。これが何より大事なポイントでした。
書く側のハードルを下げただけでは、まだ足りません。読む側にも「読みたい」と思ってもらえる仕組みが必要でした。
ゆる日報の運用ツールは、普段の業務連絡に使っているChatworkではなく、あえてSlackを使っています。仕事のやりとりと切り離すためというのはもちろん、Slackならではのスレッド機能や豊富なスタンプを活用して、日報の空間を盛り上げるためでもあります。
日報はSlackのチャンネルに自動botが日付を投稿し、そこにメンバーがスレッドで返信する形で書いていきます。こうすることでチャンネルがごちゃっとせず、後から「あの頃の自分はこんなことを考えていたな」と日付をたどって振り返るのも簡単です。もはや仕事用の日記として愛用しているメンバーもいます。

ゆる日報には、ひとつ思い切ったルールがあります。日報への返信は禁止です。
「えっ、せっかく書いてくれた人にコメントしたいのに?」と思われるかもしれません。実際、メンバーから「めっちゃ返信したいです!」という声も届いたほどです。
それでも禁止にしているのは、テキストで完結させたくなかったからです。返信できないからこそ、廊下やランチで「この前日報に書いてた〇〇、私も好きなんですよ!」という会話が生まれます。リアルなコミュニケーションへの橋渡し=相互理解のインフラという「ゆる日報」の目的そのものに直結する設計です。
もうひとつの狙いは、書く側・読む側の心理的なハードルを下げること。返信OKだと、書く側は「気の利いたことを書かなきゃ」、反応する側は「返信したらまた返ってきて……」と、小さなプレッシャーが生まれます。返信できないからこそ、誰もが気軽に書けて、気軽に読める。読み専でいることも許されるこの軽さを、何より大事にしたかったのです。
返信を禁止する代わりに、スタンプの押し合いは大歓迎です。
スタンプは「0.5秒のコミュニケーション」。「いいね」「その気持ち分かる」「すごい!」——一瞬で気持ちを伝えられて、相手にも通知の負担をかけません。日報がスタンプで埋め尽くされていく光景は、それ自体が「この投稿は盛り上がっている」という可視化になります。
ちょうどいいスタンプがなければ、自分で作ることも推奨しています。「面白いスタンプを作りたい」という動機が、「いろんな人の日報を読むのって楽しい!」という感情につながっていく。返信禁止の代わりに、別の形のコミュニケーションを育てる。スタンプはそのための仕掛けでもあります。

始めてみると、予想していなかったポジティブな声がたくさん届くようになりました。
「入社間もなく関わりのない方ばかりですが、日報から人柄が垣間見えて安心します!」 「他部署の気づきや学びが、自分の案件のTipsとして役立つことが多いです。」 「誰がどんな案件を持ち、何に悩んでいるかがわかるので、声をかけるハードルが下がりました。」 「メンバーへの感謝を伝えてくれる人が多くて、お互いへのリスペクトがこれまで以上に深まった気がします。」 「なかなか見えづらい営業の苦労と功績が可視化されたと感じます。」
さらに、面白いことも起きました。
日報で趣味の発信をしていたら、それがきっかけで新しい仕事を任された人がいるんです。「この人、キャンプに詳しいんだ」「だったら、このアウトドア案件をお願いしよう」といったように業務のスキルだけでは見えなかったポテンシャルが、日報から発掘されました。毎日効率的に仕事をこなすだけでは絶対にこぼれ落ちていた情報が、日報によって拾われる。そんなことも起きるのです。
「〇〇って難しいな、時間がかかるな」と東京メンバーがつぶやいた些細な悩みを、日報を読んだ佐賀メンバーがすくい取って、翌日の日報で「こうするといいですよ!何かあればいつでも電話ください!」と間接的に返す。その日報に、また翌日に東京メンバーから感謝のスタンプが押される。
物理的に離れていても、相手の悩みに気づいて、寄り添える。そんな空気感が、ゆる日報から生まれていました。
経営メンバーが考えていること、マネジメント層が抱えている悩み、新メンバーの葛藤——普段はなかなか見えないお互いの気持ちが、ゆる日報を通じてある程度共有される空間ができました。
正直に書くと、ゆる日報にも課題はあります。
日報をよく読む人とそうでない人とで、知っている社内情報に差が出てくる、ということです。「読まなきゃいけない」ものにすると途端にゆるくなくなるので、ここはどう設計でカバーするか、いまも試行錯誤しています。
良いところはそのままに、改善すべきところにはルールを加えながら、ゆる日報がメンバー同士のよりどころであり続けられるような運用を目指しています。
ゆる日報をやってみて、改めて思うことがあります。
日報という仕組み自体は、世の中のたくさんの会社にあるものです。でも「何を書いてもらうか」「どう運用するか」を設計し直すだけで、日報はまったく別の役割を持つ仕組みに化けます。業務管理ツールにもなれば、文化醸成のツールにもなる。組織の空気を変える装置にもなる。
もし、あなたの会社にも日報があって形骸化を感じているなら、あるいは、これから日報を導入しようと思っているなら、一度、「うちの会社は日報で何を実現したいんだっけ?」と問い直してみてはいかがでしょうか。
書く項目を変える。返信のルールを変える。読む場所を変える。それだけでも、組織の中で起こることはきっと変わっていきます。
ゆる日報は、キーワードマーケティングにとっての答えのひとつです。それぞれの会社に、それぞれの「ゆるさ」があっていいはず。みなさんの会社の日報、これからどんな形にしていきますか?
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